癌と医者と患者と

父は現在86歳。
8年前にM総合病院で前立腺癌が骨に転移していると診断されました。

その時の医者から言われたことはこんな感じでした。
・骨に転移しているため手術はできない(骨に転移した癌は手術できない)。
・治療としては、ホルモン治療(注射)と薬で癌の進行を遅らせることしかできない。
・治療の副作用としては、体がだるくなったりすることが考えられる。
・歳も歳だし、どうせ人は脳梗塞か心筋梗塞か何かで死ぬのだから。

僕も立ち会ったのですが、まるで死の宣告のような感じだったのを覚えています。
僕はもう何十年も病院のお世話になっていないので病院事情は詳しくないのですが、今どきの医者は何ともドライでこういう感じなのかと結構驚きました。

前立腺癌と言っても、前立腺肥大によって尿が出づらいとかの症状以外は大した自覚症状が無かったこともあり、父は一晩考えて病院の治療を受けないことを決めて、翌日病院へ断りの電話を入れていました(電話口で病院の受付の女性が驚いていたようです)。

その後、特に何も治療を受けず8年ほど経った最近、やはり尿が出ずらい・残尿などの症状が気になるということで、A大学病院へ診察を受けに行きました。

今回の医者から言われたことはこんな感じでした。
・前立腺に癌が見られる。
・ただ細胞を調べたところ悪性が弱く進行性の弱い(遅い)もの。
・今回は骨や他に転移の所見はなかった。
・治療としては、尿を出やすくする薬を2週間飲んで様子を見て、その後ホルモン治療を検討してはどうか。

今回も僕が立ち会いましたが、医者から伝わってくる雰囲気が8年前と全然違いました。
患者である父も、前回の医者の言葉は受け入れられなかったの対し、今回の医者の言葉は素直に受け入れていました。

<8年前>
 癌が骨に転移しているからこれからどこまで転移するか分からない。
 癌は治らないから進行を少しでも遅らせるために、死ぬまでホルモン治療を続けて行くしかない。

<今回>
 進行の遅い癌が前立腺に見られるが他への転移は見られない。
 排尿で不便を感じるようなら、まずは2週間薬で様子を見てはどうか。

現実として8年前よりも癌の状態は良くなっていたわけですが、もしホルモン治療を受け続けていたらどうなっていたかわかりません。

恐らく、良くはなっていなかっただろうと思います。
なぜなら、悪化しない前提、体がだるくなる前提の治療だから、そういった意図が働いてしまうからです。
そういった意図に明るい未来はありません。

治療にしても、施術にしても、占いにしても、カウンセリングにしても、人との会話にしても、
その結果、その人がどんな意図を持つか、どんな意図が生まれるか、がとても大切だと思います。

良くも悪くも、人は意図した通りに生きるのだから。

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